Ilyich Lamp

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ロシア語の YouTube 動画を機械翻訳の字幕で眺めていたら,Ilyich Lamp(イリイチ・ランプ)という表現が出てきました。

イリイチはロシアの一般的な人名ですが,ロシアで「イリイチ」とだけ言えば通常ウラジーミル・イリイチ・レーニンのことを指すというのは有名な話です。誤認識のようでもありますが,ロシアのことだからそういうものがあってもおかしくはないでしょう。念の為検索してみたら,果たして Лампочка Ильича(Ilyich Lamp,イリイチのランプ)という表現があるようです。これは実際には,家庭用の電球式天井照明全般を指すようです。

(注:RT はロシアの政府系メディア)

一部では Alexander Lodygin という帝政期の技術者による発明の系譜が主張されていますが,これは疑わしいでしょう。Lodygin は初期の白熱電球開発者のひとりであり,1872 年にロシアにおける特許を取得しました。ロシアでは今でも Lodygin こそが実用的な白熱電球の発明者だという認識があるようです。しかしながら,図面を見る限り,Lodygin の電球は古典的な 2 ピン式を採用した荒削りな構造です。現在の電球につながる系譜は,1888 年にエジソンが後に E26 と呼ばれることになるネジ式口金を完成させるまで待たなければなりません。当時のポスターや写真を見る限り,Ilyich Lamp として普及したのは,エジソンによるネジ式口金を採用した電球のようです。

ではなぜこれにレーニンの名が冠せられたかというと,お察しの通り,ソヴィエト政府による普及政策の結果です。1917 年に発足したばかりのロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(RSFSR,ソ連はまだ成立していない)は 1920 年に GOELRO という委員会を開始し,その計画に基づき全国での送電網整備を始めました。レーニン自身はまもなく政務を離れましたが,「共産主義とはソヴィエトの権力プラス全土の電化である」という言葉を残したほど入れ込んだ電化政策の基礎ということで,特に「イリイチ」の名を冠して呼ばれるようになったようです。

その後ソ連は解体され,電球の原理もフィラメントから LED へと変わりましたが,Ilyich Lamp という言い回しだけは残り続けて,現在にまで至るようです。

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