Docker Hub の無料プラン条件改定は正当である

  • 判断

私見です。

Docker Hub の無料プラン条件改定について

Docker Hub は Docker の開発をリードする Docker, Inc. が提供する Docker Registry サービスである。Docker Registry とは,端的に言えば,Docker イメージのためのソフトウェアレポジトリである。

今月,Docker の無料プランの利用条件に以下の二種類の変更が加わることがアナウンスされ,話題になっている。

  • 6 ヵ月以上 Push, Pull のないコンテナの削除
  • 登録ユーザで Pull の 6 時間に 200 回までの制限,匿名ユーザで 6 時間に 100 回までの制限

Resource Consumption Updates FAQ | Docker

Docker Hubがコンテナイメージの保存期間に加えてPull回数にも上限を設定すると発表 - GIGAZINE

この変更は正当なものである。

対策の必要性

対策の必要性を疑問視する人は少ないだろうが,ざっと概観すると,

  • 一部のきわめて頻繁に Push, Pull をする無料ユーザが回線リソースを圧迫している
  • まったく使われなくなったイメージがディスク容量を圧迫している

という問題に対処するためのものである。コンテナという性質上,やりとりするデータはどうしても大きくなるため,Git など他の種類のレポジトリとは比べ物にならないほど切迫した問題となっていることは容易に想像できる。

また,Docker は外向けサーバ用途向けの仕組みであるため,古いイメージが残っていることは,無益であるばかりか有害ですらある。放置されたコンテナイメージの危険性は,これまでも繰り返し指摘されてきたところである。

対策の妥当性

緩やかな制限

先述の制限は,一般的なホビー用途で超過することは難しいことが明らかである。

低廉な有料プラン

Docker Hub の料金体系は定額制であり,非常に明瞭である上,価格も低廉である。Pro で月 $ 5,Team で月 $ 7 (ボリュームディスカウントあり)という価格は,営利企業はもちろんのこと,個人や非営利のプロジェクトであっても容易に負担できるものである。

Pricing Plans - Docker Hub

自由ソフトウェアライセンス・代替サービス

そして,もっとも重要であるのは,Docker は Apache 2.0 License 等の自由ソフトウェアライセンスのもとに提供されており,営利性も含めたサードパーティのサービス提供を認めていることである。

じっさい,Amazon, Google, Microsoft, IBM, Oracle といった数多くの企業が有料の Docker Registry サービスを提供している。Gitlab のように自分の環境でプライベートな Docker Registry を立ち上げることも可能であるし,当局への必要な申請さえすれば,これを読んでいるあなたが Docker Registry サービスを提供することもできる。これもすべて,Docker が自由ソフトウェアライセンスのもとに提供されているからである。

他に無料のサービスがほとんどないのは,単にそれが商売にならないからに他ならない。

真に邪悪なのはどのようなことか?

ここまでお読みいただけば,この改定がまったく正当なものであることは容易に理解いただけるであろう。

では,真に邪悪なのはどのようなことだろうか? 実のところ,むしろこの全く逆をすることである。

すなわち,代替サービスを法的・技術的に排除したり,圧倒的な資本力を利用してダンピングを仕掛けたりすることである。

このような独占は短期的にはユーザの利益になるかもしれないが,長期的には多大な不利益をもたらす。ベンダロックインは抱き合わせ商法やサブスクリプション商法とあわせてユーザの首を真綿のように締め付け,搾れるだけ搾り取る。

もちろん,そのようなプラットフォームは,長きにわたって使われ続ける共通基盤となることもかなわない。ベンダはそろそろ潮時だと判断したころに丸ごと切り捨て,ユーザの手からはすべてが失われる。

結論

無料で無制限の Docker Registry が本当に必要だと思うなら,自分で費用を負担して無料公開するという選択肢がある。Docker のライセンスはそれを許している。

もし,それが非現実的な考えだと思うのなら,同じことは Docker, Inc. についても言える。プロダクトのライセンス上,Docker, Inc. とその Docker Hub は他のように独占的な方法で利益を上げることができない。プロダクトの価値を増すため無料の出血大サービスを提供することはあるにしても,後であくどく回収できるわけではないので限度がある。

「クレクレ厨」になってはいけない。これは,開かれたウェブを維持するために必ず守らなければならないことであり,いにしえから言い伝えている鉄の掟である。

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