マスカレード,あるいはマスクに踊る人々

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新型コロナウイルス肺炎の世界的な流行を背景に,マスクや消毒液といった「対策グッズ」が飛ぶように売れている。とくに,大容量のマスクや,100円均一などの安価なマスクは店頭でもほとんど売り切れてしまっている。

例によって,一部では転売もみられる。Amazon.co.jp で検索してみると,マスクは既に軒並み売り切れており,5~10倍といった法外な値段で転売しているマーケットプレイス出品者ばかりが並んでいる。

マスク着用にはそれほど予防効果はないとされているが、一方で、非人道的な満員電車に乗ることがほとんど必須である日本の首都圏での暮らしにおいては、誤差とは言えない程度の効果はあると考えられているようである(もっともこの問題についての信用に足りるデータはまったく存在しない)。これがこの問題の難しいところである。

Screenshot_2020-02-03 Amazon co jp 売れ筋ランキング マスク の中で最も人気のある商品です.png

大部分が新規アカウントであり,出品されているのはマスクばかりだという居直りっぷりである。こうした出品によるトラブルのおそれというのは,到底1万や2万で引き受けられるリスクではないので,住所や氏名も虚偽のものであろう(そうであれば特商法に違反する)。

出品者名は,無意味な単語に申し訳程度に「ショップ」と付けたようなぞんざいなものが多いが,「~~ EC事業部」などと法人であるかのように見せかけたり,中には大手家電量販店との誤認を狙ったようなものもみられる。

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数千の評価を得るまで育てた,ホビー商品を中心に転売しているアカウントも多く参入している。Amazon のように最低限のカスタマーサポートしか提供されないプラットフォームでは評価数だけでアカウントの信頼性を判断するので,この程度まで持ってくれば怖いものなしである。

とはいえ,これさえも彼らにとっては捨ててもよいアカウントなのであろう。マーケットプレイス出品での複数アカウント利用は規約違反であるが,法律上認められないはずのバーチャルオフィス住所での登録も漫然と認めているので,「リスクヘッジ」のための複数アカウント利用が公然と横行している。

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一方で、消毒液については,0.1% の次亜塩素酸ナトリウム溶液(物の消毒)や 70% のアルコール液(手指の消毒)が有効であるとのことであり,これらは漂白剤や酒(スピリタス)としても入手可能なものであるからか,マスクのような吊り上げはないようである。

マスクと違い、消毒の有用性は広く同意されている。もちろん、単に手洗い・うがいするのでも効果的にウイルスを取り除くことができる(コロナウイルス自体は風邪を引き起こすウイルスのひとつであり、新型といえど基本的な対策は同じとされている)。

マスクをつけるよりも消毒液を買うべきであるし、消毒液を買うよりも普段通りの手洗い・うがいを徹底すべきであろう。

実際のところ,多くの人にとっては生活に必須でないものを買い占めたところで,一部の手慣れた業者を除き,ほとんど売れることはない。アバンチュリエたちは赤字と不良在庫を抱えて途方に暮れるのが毎度のことである。しかし,困難な時にあって,市中の限られた物資が死蔵されることになることは間違いない。特別な疾患のある人など、本当に必要な人の手に届かなくなり、場合によっては重大な結果に結びつくかもしれない。

公平のために言っておくと,これは Amazon.co.jp でのみ起きていることではない。メルカリやヤフオクではさらに法外な”相場”となっている。しかし,C2C の建前をとらず,正規ルートの流通であるような装いを与えつつもそれに見合う管理をしていないという点で,Amazon.co.jp にはより大きな問題があるかと思う。Amazon.co.jp が販売する商品とマーケットプレイス出品との違いが一般的な利用者にも意識されるようになったのもつい最近のことであった(そしてそれも,「サクラ」レビューの蔓延に有効な手立てが取られなかったという管理の不十分さに対する自衛である)。

買い占め・転売(そして本稿では触れていない売り惜しみ)が問題なのではあるが,それ自体は一般に違法とはいえないのも事実である。法の欠缺として捉えるような問題でもない。結局のところ,こうした状況が(繰り返し!)引き起こされることの責任は,もっぱらプラットフォーム事業者の管理の杜撰さに帰せられるべきである。

もっとも,責任の一翼は,都市的な物流システムに頼り切って場当たり的な消費行動をするわれわれ消費者自身にもある。マスクなど,どうせ毎年必要になるものである。洗って再利用できるガーゼのマスクもある。これらをあらかじめ買っておいておいたとしても,ほとんどスペースはとらない。

マスクをめぐって踊る人々はわれわれ自身の影でもある。防災の備えを見直すひとつの機会としたい。

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